AIの進化により、人間の耳では見抜けないレベルに詐欺が進化し、ソーシャルメディアの個人情報が狙われる危険も。
しかし、具体的な対策方法で詐欺被害から身を遠ざけることも可能です。
本記事ではAIの進歩と課題も解説し、詐欺に遭わないために知っておくべき情報についてまとめていきます。
AIによる声の合成技術を利用した新型詐欺事件
予期せぬ電話から始まる新型詐欺の顛末
舞台はアメリカのアリゾナ州で実施に起こった詐欺の事例を見ながら解説をしていきます。
ステファノさんの家に見知らぬ電話番号からの不審な電話がありました。
電話に出たのは心配したステファノさん自身で、電話の向こうからは泣きじゃくる娘の声が聞こえ、その後ろで男の声が聞こえたのです。
男は自分が娘を誘拐したと主張し、身代金として100万ドル(約1億3000万円)を要求したのです。ステファノさんは払える金額は5万ドル(約670万円)だと告げ、男はそれでいいと応じました。
ステファノさんは慌てて警察に連絡を入れ、妻にも同じことを伝えました。
しかし、4分後に明らかになった事実は、娘は無事で、家の2階の部屋にいたというものでした。娘に電話をしても、何が起きたのか全く理解できない様子だったといいます。

声の合成技術で誘拐を装った詐欺が成立してしまったので、本当に怖いですね!
声の合成技術を悪用した新たな詐欺の手口
後日、この事件は声の合成技術を利用した新型詐欺だったことが明らかになりました。
つまり、娘の声を模倣したのは人間ではなく、AI技術であったのです。
これにより、ステファノさんは自分の娘が危機に直面していると錯覚し、要求された金額を払う準備をしていました。
この声の合成技術は、本人の声のサンプルさえあれば、短時間で正確な模倣音声を作り出すことが可能です。さらに、この技術は感情やイントネーションまでコピーすることができるため、人間の耳では区別がつきにくいのが現状です。
AI詐欺が進化、人間の耳では見抜けないレベルに
他にも、アメリカのサンフランシスコで最近、衝撃的な事件が起きています。
ある夫婦が息子から電話を受け、息子が交通事故で妊婦に重傷を負わせ、自分が刑務所行きになるとの話を聞かされました。その上、保釈金として1万5000ドルを要求されるという、典型的なオレオレ詐欺の手口でした。
しかしこの電話、実は息子ではなくAIによるものだったのです。声も、話の内容も息子そのもので、夫婦は騙されてしまいました。
人間の識別能力を超えるAI技術の進化
アメリカではこのようなAIを利用した詐欺事件が近年増えてきています。
詐欺師は、人間が見抜けないレベルまで高度化したAI技術を悪用し、被害者をパニックに陥れることで、自らの要求を受け入れさせることができます。
防ぐのが難しくなっているのは、AI技術が人間の識別能力を超えているからです。人間がAIによる音声と実際の人間の声を見分ける能力がないため、このような詐欺から自衛するのが難しくなっています。
このような状況下で、AI技術の進化はますます加速し、それに伴い新たな詐欺の手口も出現していくことでしょう。
そのため、消費者自身がAI技術の進化とそれがもたらすリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要となります。一方で、テクノロジー業界や政策立案者も、このような新たな詐欺手口に対応するための法律や規制を検討し、消費者を守る役割を果たすべきです。

AIを使った詐欺は非常に巧妙で、疑う余地もないものがほとんどです。新手のAI詐欺情報はこまめにチェックする様、心がけましょう。
AI技術がもたらす新たな脅威
しかし、詐欺だけがAIの脅威ではありません。事実、より深刻な犯罪が既に起きています。その一つが、AIによる暗殺事件です。
イランの核開発の中心人物が車で移動中、突如トラックから銃撃されたという事件がありました。彼はその場で亡くなりましたが、トラックに搭載されていた銃はAIが操作していたとされています。
このように、AI技術は詐欺だけでなく暗殺といった重大な犯罪にも使われる可能性があります。これは、人類がこれから向き合わなければならない新たな問題となりそうです。
ソーシャルメディアの個人情報とAI詐欺の関係
AI詐欺は、ソーシャルメディア上の情報を利用して個々の人間を狙い撃ちにします。このため、SNSでの個人情報公開が詐欺師にとっては大きなヒントになるのです。投稿を更新すればするほど、また、情報を公開すればするほど、犯罪者に利用されやすくなるというわけです。
これらの情報を基にAIは対象者の音声や言葉遣い、話し方までを模倣することが可能になります。これがAI詐欺の成功率を上げてしまう一因となっているのです。
詐欺被害から身を守るための具体的な手段
しかし、完全にSNSを閉じてしまうのは現代社会においては困難です。仕事やプライベートでSNSを活用する場面は多く、そう簡単に閉じることはできません。
そこで、FBIの特別捜査官が提案するのが、シークレットなパスワードの設定です。互いに知り得ない情報を確認し合うことで、AIによる詐欺を回避することが可能になります。
このような個別の対策だけでなく、社会全体でのAI詐欺への理解を深め、対策を考えていくことが求められます。

緊急時の合言葉を決めておくことや、急遽大金が必要になった場合、必ず折り返しの電話を受けることなどを徹底するようにしましょう。
AIの進化とそれに伴う課題
AIの進化は驚くべきものがありますが、その一方でそれがもたらす課題もまた大きいです。AI詐欺はその一つであり、さらに深刻な犯罪への利用も懸念されています。
人間がいなくても犯罪が行えるようになった現状は、新たな課題を提起しています。犯罪行為が行われた際、人間がいないとなると、「誰がやったのか?」という疑問が浮上します。
しかし、AIによって犯罪が行われた場合、その処理方法が明確になっていません。また、どのようにしてAIがその行動を取ったのか、その動機や原因を特定するのは困難です。
これらの課題に対してどう向き合い、どう解決していくのかは今後の大きな課題となるでしょう。
また、そのためにはAIについての理解を深め、適切な対策を講じることが不可欠となります。