中国の生成AI企業「MiniMax(稀宇科技)」が、2026年1月の香港上場後初となる通期決算(2025年12月期)を発表しました。
売上高は前年比158.9%増と急拡大する一方、巨額の損失も続いており、生成AIビジネスの”今の現実”が浮き彫りになった内容となっています。
決算ハイライト:急成長と赤字の並存
| 指標 | 2025年実績 | 前年比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 約126億円(7,904万ドル) | +158.9% |
| 粗利益 | 約32億円(2,010万ドル) | +437.2% |
| 粗利率 | 25.4% | +13.2ポイント改善 |
| 調整後純損失 | 約400億円(2億5,090万ドル) | 前年比やや拡大 |
売上の70%以上が海外市場から生まれており、グローバルなAIプレイヤーとしての存在感を示しています。
また、2026年2月時点での年間経常収益(ARR)は1億5,000万ドル(約240億円)を突破しており、成長の勢いは数字にも表れています。
何が売上を牽引したのか
MiniMaxの売上は大きく「AIアプリケーション」と「オープンプラットフォーム・法人向けサービス」の2本柱で構成されています。
AIアプリケーション事業が全体の67.2%(約84億円)を占め、中心を担ったのは以下の3サービスです。
- 星野(XingyeAI):国内向けAIチャットアプリ
- Talkie:海外向けAIチャットアプリ。
米国市場で急成長し、TikTokに次ぐ中国発ヒットアプリとして注目を集めています - 海螺AI(Hailuo AI):動画・音楽生成に特化したマルチモーダルAIツール。
サブスクリプション利用が急増しています
法人・開発者向けのAPIプラットフォームも前年比約198%増と爆発的に伸びました。
その背景にあるのが、2026年初頭に投入した最新モデル「M2.5」です。

1時間の連続推論コストをわずか1ドル(約158円)まで圧縮したことで、開発者からの採用が急拡大しました。
なぜ赤字は続くのか
急成長にもかかわらず損失が拡大している主な理由は、研究開発・インフラへの先行投資にあります。
調整後純損失は前年の2億4,420万ドルから2億5,090万ドルへとわずかに増加しました。
これは生成AI業界全体に共通する構図です。
モデルの訓練・推論に必要な計算コストは莫大であり、収益が伸びても同じペースでコストも膨らみます。

粗利率が25.4%まで改善していることは明るい材料ですが、OpenAIやAnthropicを含む主要プレイヤーの多くが赤字を抱えながら規模拡大を優先しているのが現状です。
ユーザー・顧客基盤の規模
MiniMaxは2025年末時点で、200以上の国・地域で累計2億3,600万人以上のユーザーにサービスを提供しています。
法人顧客・開発者も21万4,000以上に達しており、100カ国以上に広がっています。
社内でもAIを全面活用「AIネイティブ組織」の実験場に
注目すべきは財務数字だけではありません。
MiniMaxは社内業務においても積極的にAIエージェントを導入しており、社員の約90%の業務をAIエージェントがサポートしているといいます。
対象業務はソフトウェア開発、データ分析、採用、営業・マーケティングなど多岐にわたります。
2026年1月には、この社内ノウハウをもとにした「MiniMax Agent AIネイティブワークスペース」を外部向けに製品化・リリースしました。
まとめ:中国AIの実力と限界が見えた決算
今回の決算は、中国の生成AIスタートアップが「技術力」だけでなく「グローバル商業化」においても着実に力をつけていることを示す一方で、収益化までの道のりの険しさも改めて浮き彫りにしました。
DeepSeekのモデル公開で世界に衝撃を与えた中国AI勢。
MiniMaxはそのなかでも「チャットアプリ」「動画生成」「低コスト推論API」という3つの軸で差別化を図り、投資フェーズから収益フェーズへの橋渡しを模索している段階にあります。

AIビジネスの成長速度と収益化のギャップ——これはMiniMaxだけの話ではなく、今後数年のAI産業全体の鍵を握るテーマだと言えるでしょう。
