2025年4月22日 — NTT東日本は、横浜市が実施した検索拡張生成(RAG: Retrieval-Augmented Generation)技術を活用した生成AI実証実験を支援し、その成果を4月18日に発表しました。
今回の実証実験は、自治体業務におけるRAGの有用性を評価することを目的に2024年11月から2025年3月まで実施されました。
NTT東日本 神奈川事業部は、横浜市とともに実証実験を進める中で、生成AIの基礎研修やMicrosoft「Copilot」を活用したハンズオン研修を行い、業務課題の整理やプロンプト作成、運用に関する支援を行いました。
特に、実際の業務プロセスにRAGを組み込むためのプロンプトエンジニアリングや運用改善の検討も重要な役割となりました。
実証実験の成果
実証は大きく三分野で行われました。
- 選挙管理事務
選挙関連の法令集や過去の記録、関連書籍など約4,500ページに及ぶ文書を機械判読可能な形式に整理し、選挙業務に特化したRAG環境を構築しました。実際の選挙時に利用することで、プロンプトチューニングを重ね、回答精度は約9割に達しました。結果として、情報検索の効率化と精度向上の両面で大きな成果が確認されました。 - 権利擁護業務(成年後見制度等)
関連資料が多岐にわたるため、複数データの統合的な結論導出には課題が残りました。現時点ではナレッジ検索と回答生成が中心となりましたが、今後はナレッジの継続的な蓄積・更新、用語整備、人材育成なども含めた取り組みが必要とされます。 - データ活用業務
生成AIの活用可能性を業務の各フェーズに分けて検証しました。分析設計段階では、RAGに取り込んだドキュメントを基に対話形式で設計支援を受けることができ、推奨サンプルサイズの算出にも成功しました。一方、分析段階では単純なデータ取り込みだけでは十分でないケースもあり、適切なキーワード設計やデータ整備が重要であることが分かりました。
背景と今後の展望
近年、自治体では職員数の減少により業務効率化が急務となっており、生成AI導入はその解決策のひとつとされています。
総務省の調査では、政令指定都市の約4割が既に生成AIを導入しており、実証実験段階を含めると約9割に達しています。

しかし一方で、活用推進に必要な人材が不足していることも課題です。
こうした状況を踏まえ、横浜市は2023年12月から生成AIの実証実験を進め、今回さらにRAGを活用する段階へと進化させました。
NTT東日本は、環境構築に留まらず、導入から活用定着までの一貫した支援を行う方針を掲げています。
これにより、自治体業務の高度化とAI活用の実効性が高まることが期待されています。
まとめ
今回の実証は、自治体におけるRAG活用の有効性を示す重要な事例となりました。

特に情報検索の迅速化と精度向上、そして行政業務における意思決定支援の可能性が明らかになったことは他の自治体にとっても大きな示唆を与えるものです。