2025年9月1日 — 日本IBMは8月28日、生成AIの安全かつ効果的な活用を支えるための「AIガバナンス構築支援」に関する説明会を開催しました。
説明会では、双日株式会社の事例を交え、AI活用の拡大と同時に求められるガバナンスの重要性が改めて示されました。
日本IBMは生成AI時代の企業競争力を高めるため、包括的な支援体制の構築を進めています。
AIガバナンスの意義
AIガバナンスは、単なる規制や制限ではなく、企業が安心して生成AIを活用するための「安全の枠組み」です。
日本IBM 技術理事の山田敦氏は、ガバナンスの役割を「リスクの可視化と安全ルートの提示」と表現しました。
つまり、AIを利用する過程で潜む危険を事前に把握し、適切な運用の指針を示すことが目的です。
こうした取り組みは、企業がAIをビジネスに活用する際の不安を払拭するとともに、AI活用のスピードと質を両立させることにつながります。

日本IBMは、この考え方を基に、組織・プロセス・システムの三面からガバナンスの設計を進めています。
増加する生成AIリスクと対応の必要性
生成AIの活用が広がる中で技術的リスクや倫理的リスク、システム全体への影響は年々高まっています。
日本IBM コンサルティング事業本部の天白政樹氏は「これらのリスクは単発ではなく、企業全体の運営に関わるため、包括的な対応が不可欠」と指摘します。

特に生成AIは、学習データや運用環境によって結果が変化するため、継続的な監視と評価が重要になります。
日本IBMの「統合ガバナンス・プログラム」
こうした課題に対応するため、日本IBMは「統合ガバナンス・プログラム」を提案しています。
これはAIの開発・利用段階を通じて、リスクを一元的に管理し、必要に応じて改善策を反映できる枠組みです。
特徴としては以下の三つがあります。
- リスクベースのアプローチ — 利用ケースごとにリスクを評価し、必要な対策を定めます。
- ライフサイクル全体でのガバナンス — AIの設計、開発、運用、更新までを包括的に監視します。
- アジャイルな運用 — 規制や技術進化に柔軟に対応できる仕組みを整えます。
技術面の要点
日本IBMは、生成AIガバナンスにおいて「watsonx.governance」などの技術資産を活用しています。
これにより、AIエージェントごとのパフォーマンスやリスクを可視化し、ルール順守状況をリアルタイムで確認できます。

AI脅威への対応や、透明性・説明性の確保といった要素も組み込まれています。
竹田千恵氏(日本IBM 理事)は「ガバナンスは一度構築したら終わりではなく、環境や社会の変化に合わせて柔軟に更新する必要があります」と述べ、企業が持続的にAIを活用できる体制づくりを強調しました。
今後の展望
日本IBMは、AIガバナンスの普及を通じて、日本企業全体の競争力向上を目指しています。
生成AIの活用は単なる効率化にとどまらず、新たなビジネス機会の創出につながります。
そのため、企業が安全性とスピードを両立できるガバナンス体制の整備が不可欠となるでしょう。

今回の日本IBMの取り組みは国内企業にとって生成AI活用の指針となるだけでなく、世界的にも参考となる事例になると考えられます。