税理士としての業務には、顧問業務や確定申告、法人の税務申告など多岐にわたる税金に関するサポートがありますが、フリーランスならではの方法でこれらを柔軟に対応することができます。
本記事ではフリーランスの税理士としての年収やどのようなステップで独立できるか、どのようなケースで成功しやすいのか、具体的なポイントを解説していきます。
フリーランス税理士とは
フリーランス税理士とは、一人で働く税理士のことを指し、「ひとり税理士」とも呼ばれます。
自分自身で税務申告や税務相談、税務代理などの仕事を行います。
他の税理士や会社の下で働くのではなく、個人として独立している点が特徴です。
フリーランスとして開業するためには、自分の税理士事務所を持ち、納税者と直接契約して業務を行います。
基本的には他のスタッフを雇わないため、自由に使える時間が多いのもメリットです。
フリーランス税理士の仕事内容
フリーランス税理士の仕事内容は、一般的な税理士事務所と大きく変わりませんが、独自の経営戦略を採用できる自由さがあります。
これにより、様々なサービスを提供して自らの強みを作り出すことが可能です。
たとえば
- 記帳方法や税務会計に関するノウハウの提供
- オンラインセミナーの開催
- 動画や書籍の販売
などがあります。
これらを通じて、幅広い顧客に対応し、税務に関する知識を活用して多様なニーズに応えることが求められます。
個人を顧客にする場合
個人に対してフリーランス税理士が提供するサービスには
- 確定申告手続き
- 節税対策
- 相続関連の相談
などがあります。
特に不動産や株式の譲渡による所得の申告や相続税の手続きに注力する税理士も多いです。
また、副業や仮想通貨取引を行う人が増加している背景もあり、そのような個人顧客に対して税務に関するアドバイスやコンサルティングを行う機会も増えています。
知識を伝える役割も担い、税務に関する不安を解消する手助けをすることができます。
個人事業主や法人を顧客にする場合
フリーランス税理士は、個人事業主や法人へ税務顧問としての業務を提供することも多いです。
特に小規模な事業者やベンチャー企業に対する月次監査や決算手続き、税制上のアドバイスが主な業務です。
さらに、企業の従業員向けにiDeCoや確定拠出年金に関するセミナーを開催することも可能です。
また、高度な専門知識を持つ税理士は、AI導入支援や事業承継に関するコンサルティングにも取り組むことができます。
これらを通じて、事業活動全般を支援し、企業の発展に貢献しています。
フリーランス税理士の仕事の探し方
フリーランス税理士として活動する際には、積極的に仕事を探しに行くことが大切です。
いくつかの方法で仕事を見つけることができますし、それぞれの方法には異なる特徴があります。
ここでは、具体的な仕事の探し方を紹介します。
税理士事務所を開設する
まず、税理士事務所を開設することです。自宅を事務所にすることも可能で、必要なのは顧客と面談できるスペースと自分の作業スペースです。
事務所を構えても、それだけでは集客が難しいので
- ホームページ
- SNS
- YouTube
などを使って自分をPRすることも重要です。
これにより、地域の顧客からの信頼を得ることが期待できます。
前の職場から仕事をもらう
以前の職場で培った関係を活かすのも一つの手段です。
フリーランスとして独立するときは、円満に退社することが望まれます。
以前の同僚や上司に独立したことを知らせ、必要であれば自分に仕事を振ってもらえないか相談することも有効です。
この方法であれば、職場での信頼関係を活かすことができ、仕事を獲得しやすくなります。
友人や知人の紹介してもらう
フリーランスの多くが、友人や知人を通じて仕事を得ています。
知り合いに「税理士として仕事を受け付けている」と知らせておきましょう。
友人や知人からの紹介であれば、すでに一定の信頼感があるため、話がスムーズに進むことが多いです。
人脈を活かして、思わぬところから仕事が舞い込むこともあるでしょう。
ポータルサイトに登録する
仕事の依頼を受けるために、ポータルサイトに税理士として登録しておくのも有効です。
例えば、Mahoroba Proやエキテンのようなサイトがあります。
これらに登録しておけば、仕事を探している企業や個人事業主からの依頼を受けることができます。
どのサイトが自分に合っているか調べて、登録してみてください。
クラウドソーシングサイトを活用する
クラウドソーシングサイトを利用するのも一つの方法です。
日本ではランサーズやクラウドワークスなどが代表的です。
これらのサイトでは、税理士の仕事を依頼したい人と、仕事を探している人とを結びつける機能があります。
登録しておくと、興味のある案件に応募することができるので、ぜひ活用してみてください。
フリーランス税理士になるには?開業までの流れ
フリーランス税理士として新たに道を踏み出すには、下記の手順が必要です。
- 年金と健康保険の手続きを済ませる
- 開業届と青色申告承認申請書を提出する
- 屋号付き銀行口座を開設する
- 仕事を探す
まずは会社の規則に従って退職を申し込み、円満に退社することを目指しましょう。
最初のステップをしっかりと踏み出すために、具体的な内容についてお話していきます。
年金と健康保険の手続きを済ませる
退職後すぐに取り組むべきことの一つが、年金と健康保険の切り替えです。
会社員時代は厚生年金と企業の健康保険に入っていたと思いますが、退職後は国民年金と国民健康保険に切り替える必要があります。
これらの手続きは市役所で1日で済ませることが可能です。
ただし、退職後14日以内に手続きを完了する必要があるため、計画的に進めることが重要です。
開業届と青色申告承認申請書を提出する
次に必要なのが、開業届の提出と青色申告承認申請書の申請です。
これにより事業を正式にスタートしたことを国に知らせることができます。
特に青色申告を行うことで様々な税制優遇を受けることができるため、フリーランスとしての活動がより安定します。
これらの書類は税務署に提出する必要があり、不明点があれば事前に確認することをおすすめします。
屋号付き銀行口座を開設する
ビジネスの円滑な運営を目指すなら、屋号付きの銀行口座を開設するのも一案です。
これは必須ではありませんが、ビジネス用の資金管理がしやすくなりますし、クライアントにも信頼感を与えることができます。
個人名義の口座でも問題ありませんが、屋号付き口座があると取引もスムーズに進むことが多いです。
仕事を探す
すべての準備が整ったら、次は仕事を見つけ出す番です。
フリーランス税理士としての知識と経験を活かし、新たなクライアントを獲得しましょう。
継続的に成功するためには、マーケティングやネットワーキングを駆使し、しっかりとした顧客基盤を築いていくことが大切です。
フリーランス税理士のメリット
フリーランス税理士には、下記のメリットが挙げられます。
- 自由に時間を使える
- 場所を選ばず仕事できる
- 収入アップを目指せる
- 好きな仕事にチャレンジできる
- 人間関係のストレスが減る
一つ一つについて、詳しく見ていきましょう。
自由に時間を使える
働く時間を柔軟に決められるのは大きな魅力です。
予定が特になければ、早朝から仕事を始めたり、逆に昼過ぎからスタートしたりと、自分の都合に合わせて仕事を進めることが可能です。
その結果、育児や家事との両立がしやすく、ワークライフバランスの実現に寄与することがあります。
自分らしい生活リズムに合わせた働き方が実現できる点が、フリーランス税理士の魅力となっています。
場所を選ばず仕事できる
フリーランス税理士は、特定のオフィスに縛られることがなく、リモートワークが可能です。
インターネットさえあればどこでも仕事ができるので、自分の好きな場所で働けるのも大きな利点です。
時にはカフェで、時には自宅でと、気分転換を図りながら仕事をすることもでき、心地よい環境で仕事に集中することができます。
収入アップを目指せる
フリーランスでは、自分の努力次第で収入を増やすことが可能です。
独自のスキルや経験を活かして新しいクライアントを獲得することで、収入も上昇しやすい環境にあります。
効果的に時間を使い、新たな市場やニッチな分野に参入することで、収益性の高いサービスを構築することができるため、より高い収入を目指すことができます。
好きな仕事にチャレンジできる
フリーランス税理士は、自分の興味や好みに合わせた仕事を選ぶことができます。
例えば、税理士業務に加えて
- セミナー
- ブログの執筆
- 動画配信
など新しい分野にも挑戦することが可能です。
これにより、自己成長の機会を広げながら、自分の得意分野を活かして仕事を設計し直すことができます。
人間関係のストレスが減る
フリーランスとして働くことで、職場の人間関係に悩まされることが少なくなります。
同僚や上司との関係にストレスを感じることなく、自分のペースでのびのびと働くことが可能です。
これによって、より集中して仕事に取り組める環境が整い、精神的な健康も維持しやすくなります。
フリーランス税理士のデメリット
一方で、フリーランス税理士にはいくつかのデメリットも存在します。
- ルーズになりやすい
- 事業拡大しにくい
- ミスに気づかない危険性が高い
- 孤独に耐える力が必要がある
- 大きな案件に関われなくなる
これらの点も理解してうまく対処することが重要です。
ルーズになりやすい
自由度が高い分、時間管理がずさんになり、必要以上に仕事に追われる場合もあります。
無計画に働くと、生活のリズムが乱れ、休む時間が取れなくなることがあります。
その結果として、体調を崩したり、精神的ストレスを感じたりすることもあるので、自律的にスケジュールを整えることが求められます。
事業拡大しにくい
フリーランスは一人で活動することが多いため、事業規模を拡大するのは困難です。
自分一人でできる仕事量には限界がありますし、スタッフを雇わずに全てを自分でこなすのは効率的ではありません。
大規模なプロジェクトや多角的な事業展開を望む場合には、他の働き方を検討する必要があります。
ミスに気づかない危険性が高い
他者からのチェックがないため、自分のミスに気づきにくくなることがあります。
特に税理士業務では細かいミスが大きな問題につながる可能性があるため、リスク管理が非常に重要です。
外部のサービスを活用したり、自分で複数回確認するなどして、ミスを未然に防ぐ努力をする必要があります。
孤独に耐える力が必要がある
フリーランスは基本的に一人で仕事をするため、孤独感を感じることが多いです。
誰かと一緒に働いたり、意見を交換したいと感じるタイプの人には、続けることが難しい場合があります。
孤独に耐える力を鍛えたり、外部での交流を積極的に図ったりすることで、このデメリットをうまく乗り越えることができます。
大きな案件に関われなくなる
フリーランスで働く場合、大規模な案件に参加する機会が少なくなることがあります。
法人化された税理士事務所でないと信頼性を与えにくい場面もあり、競合する大手事務所には及ばないことも。
大きな案件を扱いたい場合は、チームを組んで動く選択肢を考えるのも良いでしょう。
フリーランス税理士の年収
フリーランス税理士の年収は一言で言うと、その人の仕事のスタイルに大きく左右されます。
調査によると、税理士全体の平均年収は開業税理士で744万円となっていますが、これはあくまで一つの目安です。
フリーランス税理士の場合
- 仕事の取り方
- 専門性
- 顧客数
- 勤務時間
などによって年収はばらつきます。
例えば、一人で活動するフリーランス税理士は、税理士事務所に属する税理士に比べて少し少ない感じがあるかもしれませんが、その一方で自分のペースで仕事を進められるという自由があります。
税理士の平均年収
税理士全体の平均年収は、日本税理士会連合会のデータと厚生労働省の情報から見ることができます。
日本税理士会連合会による「税理士実態調査報告書」では、開業税理士の平均年収が744万円とされています。
また、厚生労働省の調査では、税理士と公認会計士を合わせた平均年収が746万円とされています。
これらの数字は、その職業の高給取りというイメージを持たせるかもしれません。
しかし実際には、年収300万円に満たない税理士もいれば、1,000万円を超える税理士も存在します。
このように年収の幅があるのは、税理士としてどのように独自の強みを活かしていくかにかかっています。
特に出版やメディアで活躍する税理士の中には、年収が1億円を超える人もいます。
フリーランス税理士に必要な6つのスキル
フリーランス税理士として成功するためには、下記の重要なスキルが必要です。
- 営業力
- コミュニケーション能力
- ITスキル
- 専門性
- 向上心
- 相手を見極める力
これらのスキルを身につけることで、より多くのクライアントから信頼を得て、仕事の幅を広げることができます。
ここでは、フリーランス税理士が持つべき6つのスキルについて詳しく説明していきます。
営業力
フリーランス税理士として多くのクライアントを獲得し続けるためには、営業力が不可欠です。
営業力とは、単に商品やサービスを売り込むだけでなく、自分自身を売り込む力も含まれます。
潜在的なクライアントに自分の専門性や強みを伝え、信頼関係を築くことが大切です。
まずは、自分の得意分野や過去の実績を明確にし、それを効果的にアピールするスキルを磨いていきましょう。
プレゼンテーションスキルやネゴシエーション能力を高めることも、営業力を向上させるために重要です。
コミュニケーション能力
フリーランス税理士にとって、クライアントのニーズを正確に聞き取り、分かりやすく説明する能力は不可欠です。
難しい専門用語を噛み砕いて伝えたり、クライアントの不安を解消するための適切なアドバイスを提供することが求められます。
また、メールや電話、オンラインミーティングなど、様々なコミュニケーション手段に対応できる柔軟性も必要です。
こうした能力を持つことで、円滑な仕事の進行と信頼関係の構築が可能になります。
ITスキル
現代のビジネスでは、ITスキルが欠かせません。
税理士としても
- 会計ソフトの操作
- データの管理
- オンラインでの業務遂行
など、ITに関する基本的なスキルは必須です。
また、フリーランスの場合、自分自身でウェブサイトを作成したり、SNSを活用したマーケティング活動を行うこともあります。
これらの技術を使いこなすことで、クライアントに対してより効率的にサービスを提供できるようになります。
ITスキルを身につけ、時代の変化に対応することで、他の税理士との差別化を図ることができるでしょう。
専門性
税理士としての専門性は、信頼性を高めるために非常に重要です。
税務に関する法律やルールは常に変化しています。
そのため、継続的に学び続け、新たな知識を身につける姿勢が求められます。
特に、特定の業界や領域に特化した専門知識を持つことは、他の税理士との差別化ポイントとなります。
また、専門性が高まるほど、難解な税務問題に対する解決能力も向上します。
これにより、クライアントからの信頼を得やすくなり、新たなクライアントの紹介も期待できます。
向上心
向上心を持ち続けることは、フリーランス税理士としての成功を大きく左右します。
自己成長を目指して新しい技術や知識を習得する、業界の動向を常にチェックすることが大切です。
向上心を持つことで、より良いサービスをクライアントに提供できるようになり、自分自身の市場価値を高めることができます。
また、新たな挑戦を恐れず経験を積むことで、仕事の幅を広げることができるでしょう。
フリーランスだからこそ、自分のペースで学び成長することが可能です。
そのため、日々の努力を惜しまず、積極的に自分を高めていくことが重要です。
相手を見極める力
フリーランスとして働く際には、クライアントのニーズや性格を見極めることが大切です。
それぞれのクライアントに合った対応をするために、相手のバックグラウンドや求めていることを理解する力が求められます。
このスキルがあれば、的確なアドバイスを提供し、信頼関係を築くことができます。
まずは、クライアントとの対話を通じて相手の考えや目標を把握し、自分がどのようにサポートできるかを考えることがスタートとなります。
また、相手の話をしっかりと傾聴することで、信頼が深まり、より良い関係を築くことができるでしょう。
フリーランス税理士で成功するコツ
フリーランス税理士として成功するためには、まず自分自身の強みをしっかりと理解し、それを活かすことが大切です。
それと同時に、下記のポイントを押さえておくことが成功のカギとなります。
- 専門性や独自性を強くアピールして集客する
- 自己管理を徹底する
- 価格で勝負しない
一つ一つについて、詳しく見ていきましょう。
専門性や独自性を強くアピールして集客する
税務に関する一般的な知識はもちろん、特定の業種やテーマに特化した専門性を持つことが強みになります。
その専門性を活かして、ブログやSNS、セミナーなどで情報を発信し続けることで、知名度を上げましょう。
また、自分だけが提供できる独自のサービスを打ち出すと、他の税理士との差別化を図ることができます。
お客様に「あの税理士にお願いしたい」と思ってもらえるような特徴を持つことが大事です。
自己管理を徹底する
フリーランスでの働き方は自由度が高い一方で、自己管理能力が求められます。
スケジュール管理をしっかり行い、業務の優先順位をつけて効率的に仕事を進めることが重要です。
また、健康管理やメンタルケアも見逃せません。
定期的に休息を取り、リフレッシュすることも大切です。
適切な自己管理を実践することで、長期的に安定した仕事を続けることができます。
価格で勝負しない
フリーランス税理士としての成功において、価格での勝負は避けるべきです。
安価なサービスを提供することは一時的には集客につながるかもしれませんが、自身の価値を低く見積もることにつながります。
価格よりも、自分の専門性や提供するサービスの価値をアピールすることで、お客様に本当に必要とされる存在になることを目指しましょう。
高い品質のサービスを提供することが、長期的には信頼と評判につながります。
フリーランス税理士に関するよくある質問
フリーランス税理士について、多くの疑問が寄せられています。
ここで一つ一つにお答えしていきます。
フリーランス税理士で独立する前に現場経験を積みましょう!
フリーランス税理士を目指すにあたり、独立前に現場経験を積むことが重要です。
税務の実務や顧客とのコミュニケーション能力を磨くことで、独立後のスムーズな業務運営が期待できます。
現場での経験は、フリーランスとしての信頼性を高める大きな武器となります。
これからフリーランス税理士として独立を考えている方は、自らの目標やキャリアプランをしっかりと見据え、準備を進めていくことが大切です。
成功への道は平坦ではありませんが、しっかりとした計画と努力で充実したフリーランス生活を手に入れましょう。