この記事でわかること
- 確定申告の基礎から手続きの流れ
- 確定申告に必要書類の準備方法
- e-Taxの使い方
- 収入の把握方法
- 経費の計算方法
- 確定申告の期限・注意点、税務調査への対策
- 税理士などの専門家の力を借りるメリットやデメリット
動画(映像)クリエイターとは一口に言っても、その活動内容は多岐に渡ります。
ouTubeの広告収入だけでなく、スポンサーシップや著作権利による収入など、多様な収入源を持つのが特徴です。
しかし一方で、その全てを正確に把握し、確定申告に反映させるのは至難の技。
そこで本稿では、動画(映像)クリエイターの確定申告について詳しく解説します。
さらに、実務に即した情報や確定申告の期限・注意点、税務調査への対策といった税務相談で大切なポイントもお伝えします。
また、負担が重い場合や専門的な問題が出てきた際には、税理士などの専門家の力を借りる方法もおすすめです。
そのメリットや注意点についても紹介します。
動画(映像)クリエイターの確定申告は複雑で難しく感じられるかもしれませんが、適切な知識と準備があれば乗り越えられます。
確定申告を通して、自身の活動を見つめ直し、さらなる発展につなげていきましょう。
動画(映像)クリエイターにおける確定申告の重要性
現代において動画(映像)クリエイターという職業は多くの人々にとって身近なものとなりました。
しかし、この仕事をフリーランスとして行う場合、重要な義務の一つに確定申告があります。
一見、面倒な手続きに思えるかもしれませんが、確定申告を正しく行うことは自身の所得を適正に報告し、適切な税金を納めるために不可欠なプロセスです。
また、確定申告は経費の計上を通じて税金負担を軽減する機会でもあります。
ここからは、動画(映像)クリエイターとしての確定申告の基礎知識とデジタル産業と税務の関連性について詳しく解説します。
動画(映像)クリエイターとは
動画(映像)クリエイターとは、一般的には動画や映像を制作する仕事を行う個人や企業を指します。
その業務内容は多岐にわたり
- 企業のプロモーションビデオ制作
- 個人依頼の映像編集
- 自身のYouTubeチャンネルの運営
まで非常に幅広いです。
多くの映像クリエイターはフリーランスとして活動しており、常に新たなクリエイティブなビジョンを追求しながら、高品質な映像を提供することで価値を発信してお金を得ています。
しかし、フリーランスとして開業する際には「開業届」の提出が必要となります。
そして、所得が一定額を超えると所得税法に基づき確定申告が求められます。

税務に関連する知識がなければ、クリエイター自身が重要な経費を見落としてしまったり、誤った税金の納付をしてしまう可能性があります。
これらのリスクから身を守り、正当な所得に対し適正な税金を納めるためにも確定申告の知識は不可欠です。
確定申告の基礎知識
確定申告とは、所得税法に基づき、一年間に得た所得の総額とその内訳、経費等を税務署に報告する手続きのことを言います。
一般的に固定の雇用者であれば、所得税は源泉徴収されますが、フリーランスのように自営業を営む者は個人で確定申告を行う必要があります。
確定申告は一見難しい活動のように感じるかもしれませんが、基本的なルールを理解していればスムーズに行うことが可能。
税金計算の前提となる所得を算出する際、収入だけでなく必要経費も考慮しなければなりません。
必要経費とは仕事を行うために支払った経費のことを指し、これは収入から差し引かれ、課税の対象となる所得額が決定されます。
具体的には
- 映像制作ツールの購入費
- 交通費
- 外注費
などが該当します。
また、確定申告の期間や方法についても把握しておくことが重要です。

毎年2月16日から3月15日までが確定申告の受付期間となっており、税務署へ直接提出する方法の他、e-Taxという無料のインターネット申告システムを利用することも可能です。
しかし、やはり自身で全てを理解し、確定申告するのは大変な作業です。
そのため、税理士への依頼も一つの選択肢となります。
税理士は経験と知識をもとに最適な確定申告をサポートしますので、初めて確定申告を行う方や複雑な事情を抱えている方は一度相談を視野に入れるとよいでしょう。
デジタル産業と税務の関連性
動画(映像)クリエイターはデジタル産業の一部とも言えます。
近年、デジタル化が進展し、グローバルにビジネスを展開できるようになった一方で、税務に関する課題も浮上してきました。
特にフリーランスのクリエイターの場合、仕事は地理的な制約を受けずに行えるため、国内外のクライアントから依頼を受けるケースが増えています。
その結果、国内だけでなく海外からの所得が発生し、それぞれの国の税法に基づいた確定申告が必要となる場合もあります。
これには国際的な税務知識が求められ、専門的な税務対策が必要になるでしょう。

デジタル産業特有の問題として、クリエイティブな仕事の対価が一律ではなく、案件によるものや成果報酬型の場合があります。
このような点も含め、デジタル産業と税務の関連性を考慮に入れることで、適切な税務対策を立てることが可能となります。
映像製作者として知っておきたい税金の基礎知識
映像製作者として独立して仕事をこなす際、仕事のクオリティだけでなく、税金の問題も避けて通れない大切な課題となります。
ここからは、映像製作者が自身の税金を適切に計算し、納税するための基本的な知識について解説していきます。
映像製作者の税金とは
映像製作者として事業を運営する際には
- ビジネスパートナーとの関係や
- 収入・支出
- 税金の問題
などについて把握しておく必要があります。
税金は財政を支え、社会保障を提供する重要な財源となります。
映像製作者が納税の必要な税金
映像製作者が納税するべき税金は、所得税と消費税の2つが主になります。
- 所得税:あなたが得た所得から必要経費を引いた額に対して課される税金
- 消費税は:商品やサービスの提供により得た収入に課される税金
2021年10月からの税率は10%ですが、一定の売上額を下回る小規模事業者は軽減税率制度を利用できます。
税金を計算する際には、売上から必要経費を引いた所得を算出することからはじまります。
必要経費とは、事業を行うために必要な経費のことで
- 仕事に必要な機材やソフトウェア
- 移動にかかる交通費や経費
- 事務所の家賃や光熱費
など、一定の基準に該当するものが該当します。
税金計算の具体的なポイント
映像製作者が納税する所得税の計算プロセスについて、もう少し具体的に見てみましょう。
まずは、あなたの売上から必要経費を引いた金額が所得になります。
そしてこの所得に対して所得税が課税されます。
必要経費とは、映像製作者として仕事をする上で必要な経費のことです。
例えば
- カメラや照明機材
- パソコンやソフトウェアの購入費用
- スタジオのレンタル費
- スタッフの人件費
などが該当します。
これらの経費は所得から差し引かれ、実際に納税する額を減らすことができます。
2021年度の税率
所得税の税率は所得の金額によって異なります。
映像製作者として所得がある場合、2021年度の税率は以下の通りです。
- 195万円以下:5%
- 195万円超~330万円以下:10%
- 330万円超~695万円以下:20%
- 695万円超~900万円以下:23%
- 900万円超~1,800万円以下:33%
- 1,800万円超~4,000万円以下:40%
- 4,000万円超:45%
なお、これらの税率には所得控除が適用されます。
所得控除とは、税金を計算する際に一定額を所得から引くことができる制度で、単身者の場合、基本控除は38万円です。
さらに
- 年金受給者
- 高齢者
- 寡婦
- 配偶者
- 扶養親族
など、特別な状況にある人は追加の控除を受けることができます。
これらの控除を利用すると、税金を抑えることが可能です。
映像製作者と消費税
消費税は、映像製作者が提供するサービスや商品に課されます。
2021年10月からの税率は10%ですが、映像製作者の売上が一定額以下である場合は、軽減税率制度を利用し、8%で請求することも可能です。
具体的には、映像製作者の売上が年間1,000万円以下である場合が該当します。
映像製作者が消費税を計算する際は、基本的には総額表示法を使用します。
これは、製品やサービスの価格に消費税を含めた価格を表示する方法で、消費者が購入時に支払う金額を明確にするためのものです。

映像作品を作成し、クライアントに提供する際も、作品の価格に消費税を含めた金額を提示することが求められます。
動画(映像)クリエイターの確定申告手続き
動画(映像)クリエイターになると、自身の創造性を表現するだけでなく、ビジネスとして税務処理を理解する必要性が生じます。
個人事業主として自分で確定申告の手続きをすることが大事です。
ここからは、確定申告の手続きの流れ、必要な書類の準備、e-Taxの使い方など、具体的に解説します。
専門的な知識がない初めての方でも、この記事を読むことで確定申告の手続きをスムーズに行えるようになります。
確定申告の手続きの流れ
確定申告は
- 1年間の収入
- 1年間の経費
- 税金
などを税務署に報告する手続きです。
動画クリエイターの確定申告も基本的にはこの流れに沿って進みます。
まず簡単に手続きの流れを説明します。
一年間で動画編集などを通じて得た報酬(収入)と、それに関連する費用(経費)を明確に記載します。
費用には、動画の制作や編集に
- 必要な機材の購入費
- 通信費
など、事業にかかった全ての費用が含まれます。

記事やウェブサイトの動画編集のような副業を行っている場合でも、年間の収入が20万円以上であれば確定申告が必要です。
確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までです。
この期間を過ぎてしまった場合、それは問題となりますので注意が必要です。
さて、確定申告には大まかに「白色申告」と「青色申告」の二つの方法があります。
- 白色申告:手続きが簡単ですが節税のメリットはあまりない
- 青色申告:手続きがやや複雑ですが節税のメリットが大きい
動画クリエイターであっても、自身の収支の規模や事業の内容に応じて選択することが大切です。
必要書類の準備
確定申告をスムーズに進めるためには、必要な書類の準備が欠かせません。
動画クリエイターが確定申告で提出すべき書類は次の通りです。
- 印鑑(認印)
- 個人番号(マイナンバー)カード(なければ通知カード)
- 雑所得等の支払調書(YouTubeや各種プラットフォームから得た収入明細)
- 預金口座の通帳と印鑑(還付金がある場合)
- 事業用経費の領収書、レシート、明細書等
もし前年の所得が380万円を超えている場合、または青色申告を選択した場合には「給与所得の源泉徴収票」も必要となります。
これは会社から支払われる給与の収入を証明するための書類です。

自宅を事務所としている場合、家賃や光熱費などの一部を経費として計上できます。
その際には、家賃の領収書や公共料金の明細書が必要となるので、これらも準備しておくと良いでしょう。
ちなみに、白色申告を選択する場合でも、経費の詳細が記載された資料(領収書や契約書、取引明細等)を税務署から要求されることがあります。
確定申告の際に経費について疑問を持たれることを防ぐため、これらの資料もきちんと保管しておくことをお勧めします。
e-Taxの使い方
手続きの期間が来たら、税務署に書類を持って行くのではなくインターネットを利用して確定申告を行うことも可能です。
それがe-Taxです。
今ではますます多くの個人事業主がe-Taxを利用して確定申告を行っています。
e-Taxのメリット
e-Taxのメリットは
- 紙の書類を提出する手間が省ける
- 混雑する税務署に出向く必要がない
- 申告が24時間可能
など、時間や場所を選ばないという点です。
e-Taxを利用する基本的な手順
e-Taxを利用する基本的な流れとは
- 準備と収集をする
- 国税庁のホームページから「e-Tax」のページへアクセスする
- 必要な申告書をダウンロードする
- ダウンロードした申告書に必要な情報を入力する
- 指定された方法で送信する
- 送信完了を確認して税金を指定の期限までに納付する
- 申告書と支払い証明書を保存する
- 証明書を保管する
初めて利用する場合、e-Taxシステムへのログインのために、「利用者情報の登録」をする必要があります。
また、所得税の申告をするには「個人番号の事前登録」が必要となります。
これには個人番号(マイナンバーカード)と、カードリーダーが必要となります。
リーダーを使用してマイナンバーカードから情報を読み取り、システムに登録します。

手順を踏んで提出が確認できたら、その確認画面を印刷またはスクリーンショットで保存しておきましょう。
これが確定申告の証明となります。
確定申告は税金を納付するだけでなく、節税対策として活用することも可能です。
さらにe-Taxを利用する具体的な手順に関しては、下記の記事を参考にしてみてください。
動画(映像)クリエイターの収入を把握する
YouTube広告収入の確認方法、スポンサーシップ収入の把握方法、著作権利の収入把握方法について具体的に解説します。
YouTubeクリエイター 所得種類
YouTubeクリエイターとは、自身が制作したコンテンツをYouTubeに投稿し、その視聴回数や評価、チャンネル登録数などを通じて収益を得ている人々のことを指します。
一見シンプルそうに見えますが、YouTubeクリエイターの収益源は意外と多岐にわたります。
- アドセンス収益
- スーパーチャット
- スーパーステッカー
- チャンネルメンバーシップ
- コーポレイトスポンサーシップ
- マーチ販売
- クラウドファンディング
- 動画販売
など長くYouTubeに関わることで多くの収入源を開拓できます。
それぞれどのようなものなのか、詳しく掘り下げてみましょう。
アドセンス収益
YouTubeクリエイターの所得の主な種類のひとつにアドセンス収益があります。
これは、自身の投稿した動画に広告が表示された際に、その広告収益の一部がクリエイターに還元されます。
この収益は
- 広告の表示回数クリック数
- 広告の種類
などによって変動します。
大切なのは、こちらの収益はあくまでも「後払い」であるということ。
広告が表示されても、毎月20日にしか収益は入金されません。
スーパーチャットとスーパーステッカー
この2つの所得源は、ライブ配信中に視聴者から直接収入を得る方法で、YouTubeの機能の一部です。
- スーパーチャット:視聴者が対価を付けてコメントを投稿し、そのコメントが一定時間トップに固定表示される機能
- スーパーステッカー:対価を付けてステッカーを購入し、それをチャット欄に表示する機能
これらの機能を利用するには、チャンネル登録者が1,000人以上いることと、チャンネルの運営者が18歳以上であることが必要条件となります。
チャンネルメンバーシップ
これは、YouTubeチャンネルを運営する人々が、視聴者に対して月額料金を支払ってメンバーとして登録させ、特典を提供することで収入を得る方法です。
この収入の特徴は、定期的で安定した収入が見込めるところにあります。
一度メンバーになれば、自動的に毎月課金されるため、一定の収益を安定して得ることができます。
コーポレートスポンサーシップ
企業からのスポンサーシップは、YouTubeクリエイターにとって大きな収益源となりえます。
これは、企業がクリエイターの動画を見てそのコンテンツの価値を認め、広告主として支援するという形です。
- スポンサード動画の配信
- 商品レビュー
- 商品のプレゼント
など、取り扱いの方法は様々で、多額の収益を得ることが可能です。
マーチ販売とクラウドファンディング
オリジナルグッズの販売(マーチ販売)や、自身のプロジェクトに資金を出してもらう(クラウドファンディング)など、自己ブランドを展開して収益を上げることも可能です。
- タオル
- Tシャツ
- キャップ
など、ファンが欲しがるであろう商品を制作し、その売り上げを収入とする方法です。
クラウドファンディングは、新しいプロジェクトを始める際に資金を集めるための方法として有効で、ファンとのつながりを深めることもできます。
このように、YouTubeクリエイターは様々な所得種類を持っています。
それぞれの所得源に独自の特徴があり、所得を得るための条件や方法も多種多様です。

すべてのYouTubeクリエイターがこれらの収入源を均等に得ているわけではありません。
どの収入源を重視するかは、そのクリエイターのコンテンツの性質、視聴者の属性、さまざまな要素によって異なります。
たくさんの収入源を持つことで、YouTubeクリエイターは持続的に活動を続けていくことが可能なのです。
YouTube広告収入の確認方法
YouTubeで動画を公開しているクリエイターにとって、広告収入は最も身近な収入源となる場合が多いでしょう。
確認方法は次の通りです。
- GoogleアカウントでYouTubeにログインする
- マイチャンネルを選択してYouTube Studioを開く
- 左側のメニューから「収益」という項目を選ぶ
- YouTube広告からの収益が一覧で表示される
この一覧では、広告の種類や収益の合計、YouTubeプレミアムからの収益等をチェックできます。
これらの数字を見るとは具体的な詳細が確認できます。
さて、それらの数字をみて「収益が想像以上に低い」「期待したほど伸びない」と感じるかもしれません。
それは
- 広告の種類
- 視聴時間
- 視聴者の地域
など多くの要素と関係しています。
動画の品質や内容だけでなく、これらの要素も考慮に入れて戦略を練ることが求められます。
なお、YouTubeの広告収入は、一定の売上がある場合のみ確定されるシステムになっています。
収益の合計がGoogle AdSenseの支払閾値に達したら、Googleから支払いが行われます。
その際、必要な書類を事前にGoogle AdSenseに登録しておくことが重要です。

釘を打っておくべきは、この支払いは一定の源泉徴収がある給与扱いではなく、個人が自発的に確定申告を行う必要があるという点です。
著作権利の収入把握
著作権の収入は動画制作に関する権利を企業や他のクリエイターに譲渡し、その使用料を受け取るというものです。
例えば、あなたが作成したオリジナルの音楽が他者の動画で使用される場合、その使用料を受け取ることができます。
著作権の収入はYouTubeの広告収入やスポンサーシップ収入に次いで考えられる収入源です。
著作権の収入を把握するためには
- 自分の作品がどこでどのように使用されているのか
- 報酬がどのように計算されるのか
などを知ることが重要です。
その上で、自分の作品の価値を正しく評価し、それに見合った収入を得られるように交渉することが求められます。
これらの収入を得るためには、常に自分自身の作品に価値を見出し、価値を高める取り組みを忘れてはいけません。
動画(映像)クリエイターの経費について
映像表現が人々の心を捉える力を持つ今、デジタル世界でのビジュアルコンテンツ作りに携わる「動画(映像)クリエイター」の存在はますます重要になっています。
しかし、クリエイターとして活動するには、多くの経費が必要となります。
ここでは、動画(映像)クリエイターとして開業した際に必要となる経費や、その計算方法、必要な書類等について詳しく説明してまいります。
経費として認められるもの
動画(映像)クリエイターの経費として考えられるのは
- カメラ、照明器具、編集ソフトなどの機材費
- カメラや照明器具などのメンテナンスに関する費用
- 撮影用スタジオレンタル費
- モデルの報酬
- 衣装やメイク道具、小道具にかかる費用
- セミナーや展示会への参加費
- 打ち合わせなどで出た交通費や飲食費
などです。
しかし、全ての支出が経費になるわけではありません。
例えば、プライベートで使うために購入したカメラやパソコンは経費とは認められません。
費用を支出した目的が事業に関連するものであることが経費と認められる条件です。
したがって、プライベートと業務の明確な区別と、業務で使うために必要なものかどうかを常に念頭に置いておく必要があります。

開業したばかりの動画クリエイターは初期投資として高額な経費がかかることもありますが、これらも必要な経費として計上することが可能です。
ただし、年間20万円を超える機材購入などの大きな経費は、耐用年数に応じて各年度に分けて計上することが求められることを覚えておきましょう。
経費を証明する書類
経費と認められる項目について理解したら、次に重要になるのが経費を証明する書類の管理です。
経費として認められる費用を計上するには、領収書や契約書などの書類が必要となります。
これらの書類は税務署からの確認を受けた際に、経費の正当性を証明するための大切な証拠になるため、きちんと管理することが必要です。
各書類は
- 日付
- 金額
- 支払い先
- 内容
上記の項目が書かれていて、税務署から確認されるものになります。

電子領収書も認められるケースが増えてきていますが、できるだけ紙の領収書を保管することを推奨します。
手帳などに費用の詳細とともに保存すると、経費管理がしやすくなります。
不適切な経費計上が発覚した場合、罰則が科せられる可能性があります。
そのため、経費の正当性を証明できる書類の管理は、自分自身の事業運営を守るためにも重要な業務と言えるでしょう。
経費計算の考え方
動画(映像)クリエイターの経費計算の基本的な考え方は、収益から必要な経費を引いたものが利益となる、というシンプルなものです。
経費を計上することで、税金のうち自分が負担すべき額を減らすことができます。
そのため、経費の計算は、自分の手取り額を確保するために重要な作業となります。
経費は大きく分けて2種類あります。
- 必要経費:業務遂行に直接必要なもの。(機材費や撮影場所のレンタル費など)
- 按分経費:業務に使われた部分のみを経費として計上するケース(自宅を仕事場として使っている場合、家賃や光熱費の一部を経費として計上するなど)
そして、赤字が発生した場合でもパニックになる必要はありません。
経営者にとって赤字とは、支出が収入を上回った状態を指します。
その赤字分は繰越損失として、次期に持ち越すことが可能です。
これを利用すれば、赤字分を減らすことによって節税効果を実感することができます。
確定申告の期日と注意点
年間を通じて働き、所得を得た多くの個人が抱える義務が確定申告です。
払うべき税金の金額を正しく計算し、申告することが求められます。
とはいえ、確立申告にはいくつか注意が必要で、その一つが申告期限とその延長申請、もう一つが申告漏れの対策、そして税務調査に備えた対策です。
ここでは、これらについて詳しく解説し、あなたが確定申告を円滑に進められるようサポートします。
申告期限と延長申請
確定申告の期限は毎年一定で、原則として2月16日から3月15日までです。
具体的な日程は毎年税務署などから発表されますので、忘れずにチェックしましょう。
期間内に申告を行わないと、重大な問題が発生する可能性があります。
遅れて申告すると、500円から25,000円の過少納付金という罰金が科せられることがあります。
申告のために必要な書類が揃っていない場合や、忙しさから申告が遅れそうな場合は、延長申請を行うことができます。
この延長申請は、税務署に必要な書類を提出し、理由を説明することで可能となります。
延長申請を行うメリット
延長申請の大きなメリットは、確定申告の猶予期間が得られる点にあります。
締切日間際になってもまだ申告書類が完成していない場合や、必要な書類が揃っていない場合などは、延長申請を利用すれば時間的な余裕が生まれます。
この延長申請は、経理事務が複雑な自営業者や法人にとって、大変便利な制度と言えるでしょう。
精算書など細部の確認が必要な事項が多いため、急いで作業するよりも余裕をもって取り組める方が、正確性を確保できるというものです。
延長申請を行うデメリット
この延長申請にはデメリットもあります。
たとえば、延長申請が認められても、納税期限が延びるわけではありません。
したがって、確定申告が終わっていない状態で納税総額が確定しないため、納税額を適切に算出しにくいという問題が生じます。
これにより、税金の納付が遅れると延滞税が発生する可能性も込み入っております。
さらに、延長申請は繰り返し利用することで税務署からの信用を失う危険性も抱えています。
延長申請は本来、やむを得ない事由がある場合にしか許されないので、無理な理由で申請すると信用を失うこともあるのです。

事前に必要な書類を確認し、確定申告の準備を進めておけば、追加の金額を支払うことなく、スムーズに確定申告を行うことができます。
また、確定申告の手続きは、個々の所得や状況により異なるため、一度、確定申告を経験することで、次回以降の手続きがスムーズに進むメリットもあります。
確定申告漏れの対処法
確定申告の中で問題となるのが、所得の申告漏れです。
申告漏れが見つかった場合、過少申告加算税が課されるだけでなく、税務署からの信用失墜につながるため、注意が必要です。
申告漏れを避けるためには、自分の収入源を明確にすることが大切です。
例えば、創業したばかりの時期や、アルバイトやパートをしている場合など、収入の状況が複雑な場合には特に注意が必要です。
ドキュメントの準備から確定申告まで、一連のフローを理解しておくことが重要です。
もしも申告漏れが発見された場合、すぐに税務署に連絡し、適切な手続きを踏むことが大切です。
補正申告を行うことで、過少申告加算税を抑えることが可能です。
ただし、補正申告の際には正直な姿勢が求められ、嘘や隠し事がないことが前提となります。
税務調査と対策
税務調査は、税務署が納税者の申告内容について詳細に調査を行う制度です。
この税務調査が行われると、多くの人は怖いイメージを持つかもしれません。
しかし、実際には全ての税務調査が罰則を伴うわけではありません。
調査開始の通知を受け取った時点で何もかもが終わったと思うことはないです。
これまでの申告内容に問題が無ければ特に心配する必要はありません。
しかし、疑わしい点がある場合や自分が調査に対処できないと思う場合は、税理士などの専門家に相談するのが良いでしょう。

可能な限り税務調査を受けない対策をとることが望ましいです。
申告漏れを行わないことはもちろんですが、それだけでなく、事業内容に関する説明を明確に記載したり、事業費の明細を詳しく記録し、適切に保管することも重要です。
また、確定申告の作成に時間を十分にかけ、不明点は早めに解決しておくことが良いでしょう。
以上が、確定申告の注意点と対策です。年度末に迫る確定申告のために、これらの点を把握しておきましょう。
税務会計のプロフェッショナルを活用するメリット
企業運営における税務会計は
- コストの削減
- 法規制への適合
- 事業の成長を対応させる
などのために重要な要素です。
しかし特に初心者や個人事業主である場合、税務や会計について専門的な知識を持っているとは限りません。
一方で税法は難解で複雑なため、それを全て把握し自社で対応するのは決して容易ではありません。
そこで税務会計のプロフェッショナル、つまり税理士の活用が必要とされることが多いのです。
特に映像制作を行う
- 動画編集者
- YouTuber
- 動画(映像)クリエイター
なども、経費や課税対象となる収益の把握が難しく、確定申告や個人事業税の申請に頭を悩ますことが多いでしょう。
そのような場合でも税理士に依頼することで、適切な税務処理や節税対策などのアドバイスを受け、確定申告をスムーズに行うことが可能となります。
税理士の役割
税理士の役割は非常に広範囲で、企業や個人事業主の税務会計全般をサポートします。
初めに、税理士は税務申告業務の代行を行うことができます。
具体例としては
- 確定申告
- 法人税申告
- 消費税申告
- 地方税申告
などの書類作成と提出です。
特に正確な申告が求められる事業所得税の申告は、適切な経費の計上、税法に適した計算方法の適用、申告書類の緻密な作成といった専門知識と経験が必要です。
こうした難易度の高い業務を税理士が代行することで、企業や個人事業主は事業運営に専念することができます。
税理士のもう一つの重要な役割は、税務相談及び税務調査の立会いです。
新たな事業展開や企画にあたって、節税対策や税法適用の確認が必要な場合、税理士のアドバイスは非常に重要となります。

税務調査が行われた場合も、税理士が立会いを行うことで適切な対応を補助します。これにより、税務調査に伴う不安を和らげるとともに、適切な課税が行われることを確保することができます。
なお、動画編集者やYouTuberといったクリエイター業界の場合、特に白色申告の選択や経費の判断が重要です。
例えば、動画制作に必要なカメラや照明器具、編集ソフトの購入にかかる費用や、企画に必要なアイテムの購入費、さらには動画アップロードにかかる通信費など、仕事に直結する経費として計上できるものが多いからです。
しかし、「どの程度までが経費として計上可能なのか」、「どの程度までが”ずるい”とされる範囲なのか」を把握するのは難しい部分もあります。
また、一部で話題となる「YouTuberの購入品紹介」も含め、その判断が会計処理に直結します。
こうした疑問や不安を、専門的な視点から解決するのが税理士の役割なのです。
税理士に依頼するメリット
税理士に依頼するメリットは多岐にわたります。
- 正確で正当な税務申告ができる
- 経費の適切な計上と節税対策が可能
- 専門的な相談を行うことができる
- 本来の業務に集中することができる
それぞれについて、詳しくお話していきます。
正確で正当な税務申告ができる
まず一つ目は、正確で正当な税務申告ができることです。
税法の適用についての判断や、税務署への申告は、専門的な知識が求められ、少しのミスも大きなペナルティとなる恐れがあります。
しかし税理士に依頼すれば、そのリスクを軽減できます。
経費の適切な計上と節税対策が可能
二つ目のメリットは、経費の適切な計上と節税対策が可能になるという点です。
特に動画編集やYouTuberのような創造的な業務において、経費の適用範囲や計上方法は非常に難解です。
また、新たな経費項目が発生すると、その項目がどのように課税されるのか、認識を持つことが重要。
これらの問題を解決し、最適な節税対策を行うことができます。
専門的な相談を行うことができる
三つ目のメリットは、専門的な相談を行うことができるという点。
新規事業の立ち上げや企画、事業展開の際には様々な税務上の問題が発生します。
そうした場合、税理士はその専門知識を活かし、必要なアドバイスを提供します。
会計の視点から事業の成長を支援し、より良い経営を行うための提案を行うことができます。
本来の業務に集中することができる
最後に、税理士に依頼することで業務の負担を減らし、自身の本来の業務に集中することができるというメリットもあります。
特に個人事業主や動画編集、YouTuberなど自身で全ての業務をこなす必要がある場合、税務申告に時間を取られると本業に支障をきたす可能性があります。
しかし、税理士に業務を委託することで、確定申告など煩雑な業務から解放され、戦略的な企画に取り組む時間を確保することができます。
税理士に依頼する際の注意点
税理士に依頼する際の注意点はいくつかありますが、ここでは3つのポイントを挙げます。
- 相性
- 明確な料金設定
- 業績や経験
それぞれの理由について、一つ一つ見ていきましょう。
相性
税理士はあなたの個人事業や会社の財務状況を深く理解し、専門的なアドバイスを提供します。
このような信頼関係を築くためには、相性が非常に重要であり、その人物と信頼関係を築けるかどうかを見極める必要があります。
明確な料金設定
税理士の報酬体系は、一律のものではなく、個々の事務所で異なります。
そのため、依頼の前にサービス内容とそれに対しての料金を明示してもらうことが重要です。
業績や経験
税理士に依頼する際には、その人の経験年数や取り扱ったクライアントの種類を確認することをおすすめします。
また、クライアントからの評価やリピート率も、税理士選びの重要な参考指標となります。
例えば、動画編集を主な業務とする方は、動画制作やYoutuberをクライアントに持つ税理士を選ぶと良いでしょう。
動画(映像)クリエイター確定申告の全体像
本記事では、動画編集者やYouTuberが確定申告をスムーズに行うためのポイントを丁寧に解説しました。
学生であっても、動画編集を副業とするならば、確定申告は避けて通れません。
個人事業税の計算方法や白色申告のメリットデメリット、さらには自身が購入した機材やソフトウェアなどの紹介も視野に入れた際の経費計上の仕方など、多角的に解説を行ってきました。
独自の視点での動画編集を続ける一方で、法律やルールに則った正しい確定申告を心がけることが、継続的な活動の基盤となります。
YouTuberとして「経費がずるい」と思われる可能性もありますが、適正な申告を行えば問題ありません。
youtuberの確定申告のやり方を理解し、誤りのない申告をすることで、自身の活動を守ることが可能です。
確定申告は複雑に見えますが、理解して適切に行えば、あなたの創造性を最大限に発揮するための支えとなります。
この記事が、あなたの参考になれば幸いです。
- 一年間で動画編集などを通じて得た報酬(収入)と、それに関連する費用(経費)を明確に記載
- 確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日まで!
- 青色申告を選択した場合には「給与所得の源泉徴収票」も必要
- 領収書や契約書などの書類が必要
- 電子領収書も認められるケースが増えてきていますが、できるだけ紙の領収書を保管することを推奨